めし記

らくなめしがおおいです

しSUCKるねこ

しSUCKるねこ

 

 

 

「ちょっと! はやくだしなさーい!」
「わかったわかった」
 帰ってきたおれをねこが出むかえる。
 ねこは露骨に興奮した様子でおれに歩みより、ふんふん鼻で荒く息をしながら、おれのかばんに手をかけた。おれはまだ靴も脱いでない。
「おい、ちょっと待てって」
「いいからっ」
 ねこはおれからかばんを奪いとり、勝手に中を探りはじめた。
「横のチャックがついたポケットに入ってるから」
「わかったわかった!」
 ねこは大急ぎでかばんの横のポケットをさぐり、小さな封筒をとりだした。中にはチャック付きの小袋が入っている。
「キター! キッター!」
 小袋を手にしたねこが感きわまった声をあげる。小袋の中には、褐色がかった粉末がぎっちりと入っている。ねこはたまらないといった風に小袋の口を舐め、わずかに付着した粉末をべろべろとなめとり始めた。
 しょうのないやつだな。
 おれは部屋にあがってジャケットを脱いだ。うちの会社ではふだんスーツを着ないが、本社に行くときだけはスーツなのだった。
「その辺に脱いじゃっていいからさっ、それよりあれ!」
 ねこがテーブルの上を指さす。金色の箱に入った精力ドリンクと、どぎついピンク色の錠剤が置いてある。錠剤のほうは個人輸入したやつで、ナイトライフ用の薬というか、まあようするに勃起がずっと続くようになるようなやつだ。おれは錠剤をドリンクで飲みくだした。
「キミ明日は休みなんでしょ?」
「おう」
「ならさっさとお風呂入りなさーい! わいてるからーっ!」
「はいはい」
「きれいにしときなさーいっ!」
「そっちこそ、シラフのうちに爪切っとけよ」
「もう切ったよっ、お風呂も入ったからっ!」
「わかったから、声がでかいんだって」
 ねこは返事をせず、そそくさと腰かけ、テーブルの上で粉のパッケを慎重にあけた。そして小さなコーヒースプーンで粉をはかり、テーブルの上に落とした。
「あんま飛ばしすぎんなよ」
「いいからさっさとおふろっ!」
「はいはい」
 バスタオルがおれに投げつけられる。

 シャワーを浴びながらもう勃ってきた。
 血のめぐりがよくなると同時に薬も効いてきた感じだった。精力剤と薬を同時に飲むのはあんまりよろしくはないんだろうが、効き初めに多少クラっとくるぐらいだ。
 マタタビは知り合いのねこから買った。
 そいつは灰色の毛のもさっとしたねこで、こいつもうちの猫と同じでしゃべる。信用ならない感じの笑みがつねに顔面に張りついた怪しいやつで、まあ、ろくな奴じゃないのは確かだが、ろくな猫はマタタビなんか売らない。
 買ったやつはマタタビ、という名前で売られてるが、俗称みたいなもんでなんかいろいろ入ってるらしい。べつに違法じゃない。いまのところは。売ってくれたねこが言うには「今回のロットはとくにシモにきますよ~」とのことなので期待できそうだ。シモにくるというのはようするに性感にくるってことで、まあそういうやつだ。
 体を洗いおえたころには、おれのほうもだいぶその気になってきた。
 バスタオルを腰に巻いて出ていくと、ねこのほうはもう完全にキマりはじめていた。呆けた顔をしながら床に寝転んで自分でいじくっている。
「おそーいっ」
「はいはい」
「はやくやろうよーっ」
 うめき声が混じった風な声でねこが言った。
 のどが渇いていた。冷蔵庫を開けると、スポーツドリンクのペットボトルが四本あった。昼のうちにねこが買っておいたらしい。おれは一本あけて口をつけた。
「ボクものむっ」
 ねこが言うので、おれの飲みかけをさし出した。受け取ると寝転んだままペットボトルをくわえ、大分こぼしながら飲んだ。
 それからねこは四つんばいでおれの足元にすり寄ってきた。ふだんはこいつは二足歩行なんだが、シラフでないと立てないらしい。ぼんやりした顔で、耳のあたりが赤くほてっていた。
「しょうがねえな」
 もうねこは完全にその気のようで、おれの腰にまいたタオルをひったくると、自分からくわえに来た。おれも十分準備はできていて、先端部は汁でねちっこく光っていた。
 ねこはその汁を舐めとると、くわえこんで舌でつばを塗りたくり、一気に奥までくわえこんだ。ふだんはもう少し恥ずかしがるんだが、もう興奮しきっていてそれどころじゃないらしい。
「ふはっ、んっ、ふっ、んっ」
 ねこは上目遣いでおれを見ながら口を使う。うるんだ目が劣情をそそる。こいつもおれが仕込んでやってそれなりに上手くなったが、何よりくわえているときの顔がいい。生温かいぬめりに包まれてぐっと固くなってくるのが自分でもわかった。
 ねこはおれのをほおばりながら、股間に手をつけて自分で刺激し始めた。自分の行動にますます興奮したように口の動きを激しくする。
「もっと奥まで」
「んうっ」
 おれはねこの頭に手をそえ、ぐっと自分のほうに引き寄せる。
 ねこはおれの尻に手をまわし、抱き着くようにして自分から喉奥まで受けいれた。ねこは苦しいのを味わうように、のどに先端を押し付けた姿勢でしばらく固まる。ふうふうと熱い鼻息が当たる。
「ぶはぁっ」
 ねこが顔を引く。口からべたべたになった竿が解放される。赤黒くパンパンに膨れ上がっていて、粘液が小さな舌先とのあいだで糸を引いていた。よく根元までくわえこんでいたもんだ。
「けほっ」
 ねこは小さくせき込んで、それからまた口をつけてきた。だいぶキマってきているのか、なにか神秘的なものでも見るみたいならんらんとした目でおれの股間を見ながら、根元のほうに舌を這わせてくる。袋をひととおり舌でもてあそんでから、足のあいだをくぐるようにして会陰のほうまで唾を塗りたくってくる。普段だと頼まないとやってくれないやつだ。
 このままいくといつまでも舐めていそうだったが、おれのほうが物足りなくなってきた。おれは体を起こし、ねこの体を抱きあげた。
「ベッドいくの……?」
 みょうに子供じみた口調でねこが言った。
 
 寝室はふだんにも増してきれいに片づけられていた。封をあけられた新品のティッシュがふたつと、ウェットティッシュがベッドの横にあった。準備がいいやつだ。
 おれはベッドの上にねこを降ろすと、そのまま足をもちあげて開かせた。
 ねこは焦点の合わない目でおれの顔を見つめていた。部屋は明るかったがもうそんなこと気にならなさそうだ。両手で体をまさぐると、体をくねらせて細い声をあげた。やわらかい毛皮の指に吸いついてくるような感触。
 下のほうをまさぐるとねこの声はひときわ高くなった。あふれた体液で毛が湿って束になっている。指を入れると、ねこは背を弓なりにそらせてうれしそうな声をあげた。
「あー、あー、すごっ、すごっ」
 ねこはだらしない表情で言った。
「すごいっ、これっ」
 もうまともに言葉をつなげないのか、何度もすごいすごいと繰り返していた。ずいぶん効いてるな。まだ指を入れただけなのだが。軽く指をまげて内側を刺激してやると、何度もびくびくと痙攣してベッドをきしませた。
「いくっいくっいぐっ」
「もうかよ」
「いいからっ、ひいぐっ」
 ねこは息を止め、体をぴんと伸ばして硬直する。がくがくと体を揺らしてから、脱力して荒く息をした。そのあいだもおれは同じリズムで指を使って弱いところを刺激してやっていた。
 しばらくするとまたねこはがくがくと痙攣しはじめ、それを何度も繰り返した。そのたびに熱い粘膜が指にからみつき、絞めつけてはゆるんで、また絞めつけてきた。最後にひときわ大きく体をのけぞらせ、ねこは手足をぐったりとベッドの上に投げ出した。
「あー……はあー、スッキリした」
 ねこはそんな勝手なことを言う。
 前回マタタビを使ったときもそうだったが、キマってくると言葉づかいがかなり雑になるみたいだ。まあいいんだが、こっちはスッキリしていない。さて、どうしてやるか。そんなことを考えていると、ねこが言った。
「もっかいっ」
 ねこは体を起こし、おれの股間にむしゃぶりついてきた。
 あふれて垂れてきていた先走りを舐めとり、塗りたくるように舌を使う。おれの背に手をまわし、おれに上になるようにうながす。
「きてっ、きて、つぎっ、ちんぽっ」
 ねこは足をひらき、さっさと入れろとでも言うようにねだる。
 とくにじらす気もない、一気に突っこんでやる。
「あー! あー! あっあっあっあっ」
 ねこは大声をあげた。おれは近所に聞こえるのが心配だったが、こいつのほうはもう抑えがきかないのかどうでもよくなっているのか、遠慮なしによがり声をあげていた。
 遠慮がないのは声だけではない。ねこの内側はぎっちぎちとおれを締め付けてくる。体格の差もあって普段から割合きついのだが、キメてるせいか一回いったのが良かったのか、奥のほうが吸い付いてくる感じでたまらない。
 薬のせいでこっちも普段よりパンパンだったし、あまり長持ちしなさそうだ。ちょっとゆっくりやるかと思って半分引き抜いてペースを落とすと、ねこのほうが腰を使ってきた。
「いく? いくのっ? いきなさいっ」
 ねこはおれに手足をからみつかせ、器用に腰を使ってこっちを飲み込みにきた。しかたない。ちょっと早いが最後までいくか。
 おれはねこの足をつかんでもちあげ、ベッドに押し付け、ぐっと突っこんでやる。先端部が奥につき当たる感触がする。ねこはおれに征服されながらうれしそうに見上げてくる。
「あっ、あっ、あっ、これこれっ」
 ねこは満足げな声をあげる。すぐに射精感がきた。
「いくっ? いきなさいっ! いきなさーい!」
 言われるまでもなく絶頂した。叩きつけるように腰を使い、一番奥で精を吐き出す。ねこもそれを迎え入れるようにがくがくと痙攣し、体液をしぼり出そうとするように腹をびくびくと収縮させた。
「あー……マタタビ、さいっこー……」
 ねこはだらしない顔で言う。
 繋がったまましばらく余韻にひたっていた。あふれた体液でシーツにべたべたした染みができている。

「ふう、ほら、飲みなさーい」
 ねこがスポーツドリンクを冷蔵庫から出しておれに差しだした。
 だいぶシラフに戻ってきたのか、ねこの口調は普段どおりだった。
「それにしても今回のマタタビはすごかったね」
「そうみたいだな」
「休んだらまたやるからね。もっかいぐらいいけるでしょーっ」
 ねこはマタタビを追加する気まんまんのようだった。まあ、明日は休みだ。